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2018/03/28 12:08

同朋舎新社では「平安・鎌倉時代の重要文化財「別尊曼荼羅」を保護し、未来に伝える図像集『密教図像集』刊行!」のクラウドファンディングを実施していますが、この場をお借りして、仏教や曼荼羅を理解するのは難しいと感じる方々も多いことと思いますが、身近でわかりやすく、ご紹介していきます。

今回は密教図像集(仮)の執筆者である、「川崎一洋先生」(高野山大学)による寄稿です。


最近の仏像ブームで、「ほとけ」にはたくさんの種類があって、それぞれに姿の違いや個性があることが広く知られるようになりました。身体の特徴や服装などで「ほとけ」たちを如来(にょらい)、菩薩(ぼさつ)、明王(みょうおう)、天(てん)の4つのカテゴリーに分類する方法などは、すでに一般常識になっています。

 そんな「ほとけ」たちはすべて、迷える衆生(しゅじょう)を救済し、幸福に導くために存在しているのですが、各々に得意分野があり、役割分担をしていることをご存知でしょうか。例えば、薬師如来(やくしにょらい)はその名前が示すように病気を治すことを専門とし、文殊菩薩(もんじゅぼさつ)は知恵を与える「ほとけ」として有名です。愛染明王(あいぜんみょうおう)は恋愛を成就させ、毘沙門天(びしゃもんてん)は財運をもたらします。

科学や医療技術が未発達であった時代、人々は願いや目的に応じてこれらの「ほとけ」の中から本尊を選び、絵に描いたり仏像に刻んだりして一心に祈りました。そしてその効果を高めるために、別尊曼荼羅(べっそんまんだら)といわれる曼荼羅を盛んに制作しました。別尊曼荼羅とは、特定の本尊を中央に描き、その周囲に、その本尊と関係のある「ほとけ」たちや、眷属(けんぞく)といわれる従者の神々を配置した曼荼羅で、日本の密教で特に発展しました。

別尊曼荼羅は、会社組織に例えることができます。本尊は社長です。その近くには、部長クラスの力のある「ほとけ」が並び、周囲には、それらを補佐するさらに多くの「ほとけ」たちが配置されます。供養女(くようにょ)と呼ばれる、オフィスレディーに相当する女性の「ほとけ」ばかりではなく、ガードマンの神々も外周を取り囲みます。

そんな別尊曼荼羅を描いて祈願すれば、本尊のみならず、会社をあげて一丸となり、総動員で、願いを聞き届けてくれるというわけです。



皇族や貴族たちが、こぞって別尊曼荼羅の制作とそれを用いた祈祷を依頼した平安時代から鎌倉時代にかけて、美術的にも優れた別尊曼荼羅が多く描かれ、今では貴重な文化財となっていますが、依頼を受ける側の密教僧たちは、並行して、別尊曼荼羅のカタログともいうべき「曼荼羅集」を編纂しました。MOA美術館所蔵の重文「曼荼羅集」は、その代表的遺品です。

 「曼荼羅集」を繙(ひもと)けば、ヴァラエティー豊かな「ほとけ」たちの個性や関係性を知ることができるばかりではなく、昔の人々の祈りの心を垣間見ることができます。

弊社のクラウドファンディング平安・鎌倉時代の重要文化財「別尊曼荼羅」を保護し、未来に伝える図像集刊行!活動報告より転載(2018年3月27日公開記事